前置きはいらないモード、らしい
連載目次【亀岡市における地域経済の分析(入門編から本格編へ)】
1.所得から分配への流れ
2.分配から支出への流れ←今日はココから
3.支出から生産への流れ
4.亀岡市における地域経済循環率70.8%の意味 ←ココまで
5.これまで1年間の取組みと今後の方向性
(前回の続き) 亀岡市全体でみた所得の受け取りである「分配(3030億円)」に比べて、亀岡市内でお金を使う「支出」は2146億円と低くなっている、と説明しました。
※話がおえない方は、前回61歩目の記事をご覧ください。
RESAS:地域経済循環マップ>地域経済循環図(亀岡市、2013年)
「分配(3030億円)」に比べて「支出」が2146億円と低くなっているのは、亀岡市内から亀岡市外へ、お金が流出しているためです。
上記図中の「支出」欄の「詳細を見る」をクリックすると、次の図が出てきます。
「地域外への流出」として示されている数字は、
①民間消費では46億円
②民間投資では119億円
③地域内産業の移輸出入収支額などである「その他支出」では719億円
となっています。
前回はここまででした。本記事の本題はココからです。
Q3.お金の流出(地域外への流出)とは具体的にどのようなことか?
①民間消費は、A.日用品の買い物など「日常生活での消費」、B.観光時の飲食・宿泊・お土産の購入などの「非日常的な消費」からなります。
亀岡市は、2013年の観光客数で見ると京都府内で京都市・宇治市・宮津市につぐ4番目の227万人であり、観光消費額も京都市・宮津市・京丹後市につぐ4番目の55億円でした。
(平成25年京都府統計書 第10章運輸・情報通信・観光「10-13.市町村別観光入込客数及び観光消費額」より)
つまり、外からの観光客が55億円ものお金を使ってくれている地域ですが(主にB)、
それ以上に亀岡市民の買い物が京都市などで行われている結果(主にA)、
差し引きではお金が流出していることになります。
「民間消費における46億円の流出」はそのような結果を示しています。
②民間投資は、企業が工場やオフィスを立てたり、機械設備を導入するなど設備投資のことです。
「亀岡市の企業が、稼いだ所得を、亀岡市外で投資に使う」ことで、お金が亀岡市から流出します。
その投資額が「亀岡市外の企業が、亀岡市内で設備投資に使う金額」(=亀岡市に流入する金額)よりも大きいため、差し引きではお金が流出していることになります。
「民間投資における119億円の流出」はそのような結果を示しています。
なお、「オレは銀行へ貯金しているから支出していない!」という方もいますが、銀行は預金を元手に貸出しなどを行い、そのお金が企業などの事業資金となるため、いずれにせよお金は支出に回ることになります。
③「その他支出」の主な中身である地域内産業の移輸出入収支額は、
・地域の企業が地域外の企業や住民へ商品を売る(域外へのBtoB、BtoCの販売)、
・地域外の企業から商品を買う(域外からの仕入れ)、
これにより生じた地域全体のお金の出入りの差し引きを示します。
ざっくりしたイメージでは、亀岡市を一つの国として考えます。
すると、亀岡市の企業が、その外にいる企業・住民とビジネスするのは「貿易」みたいなものです。
その「他地域との貿易」によってやりとりされた代金の収支が、地域内産業の移輸出入収支です。
亀岡市の場合は、 「地域外の企業・住民への販売」よりも「地域外の企業からの仕入れ」の方が大きい結果、地域内産業の移輸出入額の収支でみると、お金が流出していることになります。
「その他支出」における719億円の流出はそのような結果を示しています。
みんながお金をどこでどう使うが重要
(3)支出から生産への流れ
①〜③をまとめて計算すると、純計884億円が地域外に流出し、亀岡市内の生産活動に回らないことになります。
亀岡市の住民・企業ベースでみると、受け取った所得(分配)は3030億円ですが、そこから884億円が地域外に流出し、残り2146億円が地域内で支出され、対応する地域内生産が生じます。
つまり、亀岡市という地域ベースで見ると、支出=生産=2146億円となり、亀岡市の住民・企業全体が受け取った所得(分配)3030億円に比べて、経済活動が小さくなっています。
ここまでで話が難しいと感じる方は、
・亀岡市の外と内、どこで稼がれた所得なのか
・いずれにせよ亀岡市の住民・企業の所得となったお金が、亀岡市の外と内、どこで使われるか
という観点で、話を読み返してみてください。
そこでは、亀岡市の外にお金が出てしまうことを「流出」、亀岡市の内にお金が入ってくることを「流入」と捉えています。
(4)亀岡市における地域経済循環率70.8%の意味
冒頭で説明した「地域経済循環率70.8%=生産2146億円÷分配3030億円」は、「亀岡市の住民・企業の所得が、亀岡市内での支出・生産に7割しか回されていない状態」を示します。
京都府内各市の地域経済循環率は様々ですが、その数字から地域経済の様子をうかがい知ることができます。
地域経済循環率が高い・低い背景には、経済構造のパターンがあるためです。
※興味がある方は、RESASを用いた分析に関する参考書をご覧ください(前回の記事にも掲げています)。
●京都府自治体の地域経済指標と昼夜間人口比率(RESASにて2018年7月に作成。そのため、数字は2019年現在に比べ若干のズレが生じている)
他市と比べると、亀岡市は地域経済循環率が低いと言えます。その直接的な要因としては、これまで見た通り、①民間消費、②民間投資、③地域内産業の移輸出入収支額(その他支出)において、お金が流出しているためです。
地域の中でお金が使われ(域内での支出、消費や投資の流入)、
それによって生産が盛んになり、
稼いだお金が所得として分配され、
可処分所得が増加することで支出が増え、新たな生産につながる。
という生産→分配→支出→生産→・・・というお金が地域内でグルグル回る循環が経済活動を活発にし、結果的に地域全体の所得を向上させると考えられます。
亀岡市の地域経済循環率が低いというのは、こうした好循環が生まれていない状況を示すため、対策が必要になります。
ではどうしたら良いでしょうか?次回はここからスタートします。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。東京でも京都でも夏は暑いです!62歩目。
亀岡市役所 地方創生担当部長あらため副市長
仲山徳音(なかやま なるね)
E-mail: nakayama88@city.kameoka.lg.jp
Phone: (0771) 22-3131(大代表)
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