シュウチュウとブンサンがテーマらしい
地方創生担当部長の仲山徳音(なかやま なるね)です。
この2月に、京都市の職員の方とお話しする機会がありました。SDGsと地方連携をテーマとした会合でしたが、その中で、
●京都市:「観光は担当ではないのですが、どう集客するかより、渋滞など観光公害(オーバーツーリズム)の方が大きな問題になりつつある印象ですね」との由。
やはり、地方と大都市とでは、観光課題が全く異なるなぁと実感しました。
交通網のマネジメントや情報発信という面でも、京都市が、何を課題として捉えているかがハッキリと現れています。
京都市の主要な観光地を周遊し、自由に乗り降りできる定額のループバスの運行が13日に始まる。市民らの足である市営バスが混雑するなか、観光客の新たな交通手段としての需要を見込む。市民と観光客の交通手段の「すみ分け」ができるかどうかが課題だ。(2019年4月12日日本経済新聞)https://www.nikkei.com/article/DGXMZO43622320R10C19A4LKA000/
混雑が著しいのが祇園や東山、嵐山、二条城周辺など市中心部であることから、市と市観光協会は「とっておきの京都プロジェクト」と題して大原や伏見、山科など市周辺部にある6つの観光地を推奨している。
プロジェクトのホームページは2018年11月に開設され、6地域の見どころやイベント情報を発信している。観光客受け入れの余地があるこれらの地域を売り込むことで市中心部の混雑を緩和しようとしているわけだ。(2019年4月13日ビジネス+IT)https://www.sbbit.jp/article/cont1/36283
また、つい先月に策定された「京都府観光総合戦略(2019年3月)」でも、
地方と大都市の「観光格差」を踏まえ、京都市の中で観光客を分散させるだけでなく、
オール京都での周遊観光につなげていくことが打ち出されています。
こうした課題は、京都府のみならず、観光庁でもフォーカスしています。
先般、政府から公開された動画「観光教育ノススメ」。マジメな内容ですが、2倍速でも分かりやすいです。
この中で、オーバーツーリズムに対しては観光客数の制限ではなく、「分散」をススメていきましょうと教えられています(22:23〜)
例えば、①季節、②場所、③時間、それぞれで分散をはかれます。
①は、前回記事で紹介したように冬季限定のイベント開催
②は、まさしく、都市から地方へ周遊させる取組み(広域観光)
③は、例えば、星や動物を見る「ナイトツアー」、日の出や雲海などの自然現象を楽しむ「朝観光」などです。
(亀岡の朝霧からできた「雲海」。最近、じわじわ知名度が上がってきました)
亀岡市でも昨年3月に、期間限定で雲海が見わたせる「霧のテラス」を整備しました。
実は、観光庁動画の22:28〜22:33にも、亀岡市の「夜明けの雲海」が朝観光の資源としてピックアップされています。
民間企業とコラボして今後力を入れていきたい部分ですので、ぜひご注目ください。
もうひとつのテーマは、インバウンド
日本人観光客の取り込みは重要ですし、これまでも各自治体が取り組んできたところです。
一方、訪日観光客の取り込みも、亀岡市において年々重要性が増しています。
例えば、下記の円グラフ。
保津川下りの観光客数と出身地域の内訳を表したものですが、
・観光客数は2012年19万人→2016年22万人(+3万人増)
・観光客の内訳では「近畿」の29%に次ぎ、「外国」の21%が最多に。
となっており、訪日観光客の取り込みが、亀岡市の観光産業を支える生命線になってきていると言えます。
こうした状況を踏まえると、地域自らが積極的に訪日観光客を誘客する必要があります。
①情報やエンタメが豊富な都市に、観光客は集中しがちであり、
②それゆえに、旅行事業者も都市への投資や誘客、情報発信を優先する
というサイクルになりがちです。
そのため、地域自らがガンガン攻めていかない限り、
都市から地方への訪日観光客の流れはおきにくいだろうな…
というのが、地域にいる側としての実感です。
マッチ売りの少女、大変だっただろうな…(ノ_<)
こうした考えのもと、私の母校である在仏のインシアード経営大学院のジャパントリップを誘致したのが、昨年10月。
(注)ジャパントリップ=日本人留学生や教員が、学期休暇中に、在学生を日本に連れてきて、1週間程度で案内して回るツアー。「ジャパントレック」ともいう。
天橋立を囲む「海の京都」の宮津市にも協力いただき、京都縦貫道で「森の京都」の亀岡市とつないだ周遊観光の可能性を、モニターテストしました。
今回は、課題として浮かび上がった亀岡市内の「訪日観光客向けの観光コンテンツ」の磨き上げをはかります。
昨年11月から12月にかけて、知人がいる欧米の大学に、片っ端から営業資料を送っていきます。
このシーズンになると、3月のジャパントリップに向けて、各大学側で企画が本格化していくからです。地域資源をPRした企画案をこちらから売り込みます。
「大都市では味わえない、地域の観光も魅力ありますよ」
「せっかくなら、オリジナルのジャパントリップにしませんか」
トリップ運営者とのやりとりは、魅力ある周遊コースを作る上で重要ですし、
こうした誘致活動、その後の発信の積み重ねで、地域の魅力が広まります。
という目的があるので頑張りますが、ではこうした「営業」が、実際どのくらい成功するでしょうか?
・・・
企業で営業されている方ならお分かりかと思いますが、現実は厳しいです。
返信が来ないことも多々あります。
行き先の天秤にかけられ、検討の結果、「やっぱりごめん・・・」と言われることも。
へこたれないメンタルが大事です。ノルマがあるわけではない以上、拾ってくれる先が現れるまで、前向きに取り組めばいいだけです。
そしてとうとう、正式に訪問してくれる1校が見つかりました。
アメリカのシカゴ大学公共政策大学院(ハリス・スクール)です。
全米屈指の公共政策を学ぶ大学院とされています。
12月に連絡を開始して、数度の情報交換を経て、ちょうど1ヶ月後にプロジェクト採用のお知らせが。
運営者の方からは、男気あるメールが。
「参加者を楽しませることはもちろん、ローカルコンテンツの可能性について、参加者かつポリシーメーカー目線で相互に学ぶ、貴重な機会だと判断いたしました。日程については、3月29日(金)でお願いできませんでしょうか」
よし頑張ろう、と3月の観光プロジェクト実施に向けて動き出すことになりました。
(ナレーション)
こうして10月に続くプロジェクト第二弾が始まった。だが、この「3月29日(金)」が後に重大な意味をもつことを、このとき地方創生担当部長は知る由もなかった。(次号につづく)
最後までお読みいただきありがとうございました。はるはやてを背中に57歩目。
亀岡市役所 地方創生担当部長
仲山徳音(なかやま なるね)
E-mail: nakayama88@city.kameoka.lg.jp
Phone: (0771) 25-5006