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あなたと一緒に取り組むための、京都府亀岡市の地方創生ブログ

51歩目:【環境政策編②】〇〇部長、世界と日本と、ときどき亀岡(〇〇に入るものは?)

目に見えないことはピンと来ないものらしい

地方創生担当部長の仲山徳音(なかやま なるね)です。

   

前回は、脱プラスチックに進むアパレル・外食大手のトレンドと、亀岡市のオーバードライブこと「プラスチックごみゼロ宣言」により、波紋が生まれていることをご紹介しました。

 

担当課に対して、他自治体・メディアから問い合わせが殺到。昨年12月13日の宣言発表から3週間で、新聞7社、TV6社、6つの自治体から取材がありました。

 

実は、東京都小池知事の12月記者会見でも、亀岡市をめぐる質疑応答があります。

【記者】次に、京都府亀岡市が、プラスチックごみによる海洋汚染などを減らすため、プラスチック製レジ袋の使用を禁止する条例の制定を目指す方針を明らかにしました。実現すれば、環境省のレジ袋有料化方針を上回り、おそらく全国初の試みになるとのことです。仮に、首都東京がレジ袋を禁止すれば、とても大きなインパクトがあるかと思いますが、知事は同様の条例化についてどのように思われますでしょうか。

 

【知事】都といたしまして、これまでレジ袋の無償配布ゼロということを目標に掲げてまいりました。また、関係事業者との意見交換も行っております。また、一方で、国に有料化をはじめとする施策の強化も求めてきたところでございます。私は、環境大臣時代にこれを提唱いたしまして、そして関係団体の皆様方とも意見交換などを進めて、そこからだんだん有料化であるとか、レジ袋の代わりにエコバッグを持ちましょうとか、それから、風呂敷を1枚潜ませておけば良いだけですので、こういった形で伝統的な環境の技を活かしていきましょうなど申し上げてきているわけでございます。

亀岡市のチャレンジは大変意義が大きいと思いますし、また、都といたしまして、有料化が実効性ある仕組みとなるように、引き続き、国に求めていきたいと考えております。(小池知事「知事の部屋」/記者会見2018年12月14日)

http://www.metro.tokyo.jp/tosei/governor/governor/kishakaiken/2018/12/14.html

 

反響の中で、こうした声も。

罰則付きプラスチック製レジ袋禁止条例制定を目指す京都府亀岡市は29日、店舗向けの説明会を初開催する。規制を受ける店舗側から「なぜ今、条例が必要か分からない」という声が上がっており、市は保津川の環境、景観保全について、理解を求めていく考えだ。(2019年1月26日京都新聞

https://www.kyoto-np.co.jp/local/article/20190126000030

 

今年1月15日に放映された『ガイアの夜明け【“あなたのゴミ”その行方~迫る!「プラスチック危機」~】』でも、

「なぜ今、スーパーでレジ袋が有料化されるのか」わけを尋ねられたところ、え・・・知らないと答える女性買物客の声が収録されていました。

https://www.tv-tokyo.co.jp/plus/business/entry/2019/018732.html

 

なぜ今、レジ袋やストローなど使い捨てプラスチック製品を見直す動きが出ているのか。読者の皆様はご存じでしょうか?

 

実は、この問題に対する反応は、日本と世界との間で温度差があるようにも思われます。まず、世界の動きから見ていきます。

世界の動きとハードボイルドワンダーランド

プラスチックは非常に便利な、文明の利器です。ただ、その「使い捨て= Single Use」をやめるよう、世界的な流れが来ているように見受けられます。

 

例えば、このような記事が出されています。

2025年までにプラスチック製のレジ袋やストロー、食器の使用をやめた上、最終的には使い捨てプラスチックの全廃を目指す戦略を各国がつくる、などとする国連環境計画(UNEP)の閣僚宣言案が15日、明らかになった。国連加盟各国の環境相らが参加し、来年3月にナイロビで開く第4回国連環境総会(UNEA4)での採択を目指す。(2018年12月15日共同通信

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181215-00000032-kyodonews-soci

 

国連環境計画(United Nations Environment Programme)は、報道に先駆けて12月6日、「使い捨てプラスチックとマイクロプラスチックに対する法的規制」(Legal Limits on Single-Use Plastics and Microplastics)という100頁を超える詳細なレポートを公表しています。

 

この国連のレポートでは、

・ビニール袋、使い捨てプラスチック容器・包装、マイクロプラスチックの3種がプラごみの3大要因

・世界192か国中、66%の国でビニール袋に対する各種規制をすでに導入。無償配布禁止が83か国、製造・輸入禁止が61か国、製造時に課税するのが27か国

・プラスチック容器・包装が、プラごみの47%。その半分がアジアから生み出されている(中国が最大。日本、韓国、台湾、香港も名指し列挙)

・一人当たりのプラスチック容器・包装の廃棄量は、日本が世界ワースト2位(1位はアメリカ、3位はEU

 と述べられています。

 

また、続く12月19日、EU28カ国全てが、ストローや食器など10種類の使い捨てプラスチック製品を2021年までに廃止することに合意しています。

この中では、ペットボトルの回収率を2025年までに75%、2029年までに90%にすることともされています。

 

ここまで進めてしまって、生活に支障が出ないのだろうか。どこまで周知されているのだろうか。日本の我々から見ると、色々と疑問が出てくるかもしれません。

 

実は、世界で最も観光客が訪れる国、フランスでは、すでにレジでのビニール袋配布が禁止され、違反した事業者には罰金を課しています。

フランスで最近、持ち帰りができる総菜店や食料品店の風景が変わった。2016年7月からレジ袋の利用が全面禁止され、店側は持ち帰りの客に提供できなくなった。違反した場合は最高で罰金10万ユーロ(約1200万円)、禁錮2年と重い。

対象は厚さ50ミクロン未満のプラスチック袋。パリではレジ袋の代わりに、利用が認められている茶色い紙袋や生分解可能な袋を出す店が目立つようになった。(2017年3月21日日経新聞

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO14285010R20C17A3EAC000/

 

私も昨年7月までフランスに留学していたため、実際に生活で体験しました。

 

最初は、「このレジのおばちゃんたち、なぜ品物をダイレクトに渡してくるのだろう。ガサツすぎないか・・・」と疑問に思いつつ、エコバッグを使うようになりました。

 

戸惑いは一瞬だけ。どのスーパーでも同じ対応であるため、すぐに慣れます。

(日曜のマルシェなどで魚や鶏肉を買った際には、紙袋で渡してきます)

 

きちんとルールとして成立し、誰もが同じ対応をしている、ということが消費者の行動を変えるために重要だと思います。

 

燕雀いづくんぞ

こうした各国の動きに対して、プラスチックを規制する2018年6月G7「海洋プラスチック憲章」(Ocean Plastics Charter)に日本は署名しておらず、対応が遅れているとの批判がありました。

 

海洋に流出したプラスチックごみの多くは、日本以外の国から出されているとされ(環境省)、特に発生源が「先進国以外」である以上、日本の取り組みとしては慎重な議論をおこなうべきと判断したとの報道がされていました。

 

しかしながら、それが変わりつつあります。

環境省が海洋プラスチックごみの拡大防止に向け策定中の「プラスチック資源循環戦略」に、今年6月の先進7カ国(G7)首脳会議(サミット)で提起された「海洋プラスチック憲章」の数値目標を反映させる方針を固めたことが20日、分かった。政府はG7サミットで憲章の署名を見送ったが、この問題が深刻化していることを受け、先進国を中心とした国際協調路線へとかじを切った。(2018年8月21日産経新聞https://www.sankei.com/world/news/180821/wor1808210004-n1.html

 

上記報道にもあった「プラスチック資源循環戦略」は素案が環境省から公表されています。

http://www.env.go.jp/press/files/jp/110266.pdf

 

ポイントとしては、日本がこれまで率先してきたプラスチックの適正処理や3R(リデュース・リユース・リサイクル)、再生利用の促進といった枠組みに基づき、

<リデュース>

①2030年までにワンウェイプラスチックを累積25%排出抑制

リユース・リサイクル>

②2025年までにリユース・リサイクル可能なデザインに

③2030年までに容器包装の6割をリサイクル・リユース

2035年までに使用済プラスチックを100%有効利用

<再生利用・バイオマスプラスチック>

⑤2030年までに再生利用を倍増

⑥2030年までにバイオマスプラスチックを約200万トン導入

を目指すという内容です。国家レベルでは、今後5年間から15年以上にわたる息の長い取り組みにならざるを得ない、という現実の現れだと思います。

 

その中で、プラごみを減らす「リデュース」の取り組みとして、レジ袋の有料化を義務づけ(無料配布禁止等)が記されています。

 

最終的には国レベル・地球規模で取り組むべき問題だとして、地方自治体としてその実現の日までに、どのように取り組むかが一つの判断だと思います。

 

大空から地球を俯瞰するばかりでなく、地についた足元を見てみると

「おもてなし」や「もったいない」は、日本人が重視する美意識とされます(平成30年版環境白書より)。

 

世界的に通用する価値観であり、日本人がロシアW杯スタジアムで見せた「ごみ拾い行動」は海外でも称賛されていました。

 

また、世界の貧困問題を視野に、フードロスを減らしていく「救缶鳥プロジェクト」のような素晴らしい取り組みを沢山見つけることができます。

 

しかし、それとは乖離した現実が、目の前に広がるのも事実です。大雨の後、保津川の河川敷は流されてきたゴミで埋まり、非常に痛々しい姿になります。

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ロッコ観光列車と保津川下り合わせて150万人の観光客が訪れるこの場所を、ゴミだらけの河川敷にしておくのか。

 

波紋を呼んでいる「プラスチックごみゼロ宣言」の背景について、亀岡市の立場から、説明しています。ぜひご一読いただければ幸いです。

https://www.city.kameoka.kyoto.jp/kankyousoumu/plazero1.html?fbclid=IwAR2ME08es0UmLKHf9atJDGm_DN4brZFS6AbH-F9JuiewvFDKkAk4yyIkEno

 

保津川を清掃する活動の、立ち上げ当初からメンバーであった保津川下りの船頭さんに伺うと、

「12年前、雄大保津峡の片隅で、たった2人から始めた。押し寄せてくる漂着ゴミに、自分たちの活動は意味があるのか」

自問自答する日々だったそうです。それが今、メディアから注目を浴びる大きな活動となっています。

 

明日1月29日に予定された地元業者との意見交換会に向け、すでに昨年から亀岡市役所も動き出しています。

 

環境問題は、消費者や事業者の活動そのものに起因する以上、誰もが無関係ではいられません。だからこその批判や懸念だと思います。

 

お互いの立場も踏まえて、どのような環境政策を今後創り出していけるのか、ぜひ引き続き注目していただきたいと思います。

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。寒空の中、51歩目!

 


亀岡市役所 地方創生担当部長 

仲山徳音(なかやま なるね)

E-mail: nakayama88@city.kameoka.lg.jp

Phone: (0771) 25-5006