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52歩目:【環境政策編③】〇〇部長、地方創生の現場からSDGsを見る(〇〇に入るものは?)

SDGsという言葉、流行っているようでまだまだ浸透していないらしい

地方創生担当部長の仲山徳音(なかやま なるね)です。

   

前回までの2つの記事で、脱プラスチックをめぐる世界と外食・アパレル産業の動きをお伝えしました。

 

日本の環境省の取り組みにも言及しましたが、今回はもう少し話を広げてみたいと思います。

 

脱プラスチックの議論が出るとき、SDGsエスディージーズ)という言葉もいっしょに見かけることがあります。

 

読者の皆さんは、このSDGsの意味をご存知でしょうか?

 

SDGs(Sustainable Development Goals)は「持続可能な開発目標」と訳されます。カンタンに言えば、

 

・みんなが自分の利益だけを追求したら、地球や社会はダメになりますよ

・後回しにされてきた問題を解決するために、みんなで行動しましょう

 

というものです。

 

SDGsは、国連によって2015年9月25日に採択され、「17の目標」を掲げています。その下に、目標を具体化する「169のターゲット」がおかれています。

1. 貧困:貧困をなくそう

2. 飢餓:飢餓をゼロに

3. 保健:すべての人に健康と福祉を

4. 教育:質の高い教育をみんなに

5. ジェンダージェンダー平等を実現しよう

6. 水・衛生:安全な水とトイレを世界中に

7. エネルギー:エネルギーをみんなに そしてクリーンに

8. 成長・雇用:働きがいも経済成長も

9. イノベーション:産業と技術革新の基盤をつくろう

10. 不平等:人や国の不平等をなくそう

11. 都市:住み続けられるまちづくりを

12. 生産・消費:つくる責任 つかう責任

13. 気候変動:気候変動に具体的な対策を

14. 海洋資源:海の豊かさを守ろう

15. 陸上資源:陸の豊かさも守ろう

16. 平和:平和と公正をすべての人に

17. 実施手段:パートナーシップで目標を達成しよう

(2019年1月外務省資料より)

https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/pdf/about_sdgs_summary.pdf 

 

へぇ~そうなんだ、と思われたかもしれませんが、このSDGsとして掲げられた17の目標を2030年までに達成するために、日本も動かなければなりません。

 

政府は、2016年5月20日SDGs推進本部(本部長は総理大臣)を立ち上げ、2019年1月末までに6回の会合を行っています。

(参考:https://www.kantei.go.jp/jp/singi/sdgs/

 

その中で、日本の行動計画として最新のものは、「SDGsアクションプラン2019」(2018年12月21日)としてまとまっています。

(参考:https://www.kantei.go.jp/jp/singi/sdgs/pdf/actionplan2019.pdf

 

地球規模のスケールとなる大きな話ですが、地方自治体も無関係ではありません

 

オールジャパンSDGsを推進する」との総理発言があり(2018年6月15日)、SDGsをエンジンとした地方創生を進めるよう求められています。

 

その中で、上記の総理発言と同日に、国内29都市が「SDGs未来都市」として選定されています。

 

自治体間でも、SDGsを政策に織り込んでいるかどうかが、明確に見え始めており、評価軸となってきているということです。

 

SDGs未来都市に関する政府プレスリリース(2018年6月15日)

https://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kankyo/teian/pdf/result01.pdf

 

なお、このような動きは、外務省のHPに資料やリンクが豊富に掲載されています。

https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/index.html

 

一方で、こうしたSDGsをめぐる考えや計画がどこまで浸透しているか。

興味深いアンケート結果が公表されています。

 

全国の地方自治体に対するアンケート調査結果(回答数684/1797)

f:id:nakayamanarune:20190205044659p:plain

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(2017年10月内閣府地方創生推進事務局資料)https://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kankyo/pdf/sdgs_dai4/shiryou_4.pdf

 

会員企業に対するアンケート調査結果(回答数163/254)

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(2018年3月GCNJ・IGES資料)

http://www.ungcjn.org/sdgs/pdf/elements_file_4001.pdf

 

こうした資料からは、SDGsという言葉は、自治体においても、企業経営陣においても、4割程度の定着にとどまると見受けられます。

 

世界のビジネススクールでも注目のESG投資

なお、こうしたSDGsと並んで最近みかけるようになったアルファベットとして、ESG(イーエスジーというものがあります。

 

より多く見るのは、「ESG投資」でしょうか。

 

これは、Environment(環境)、Social(社会)および Governance(企業統治)という3つの側面に配慮している企業を選び、投資をしていくというもの。

 

これまでのように、お金を稼げる企業であるという理由だけで投資するのではなく、社会的な責任を果たしているかどうかを評価軸に加えた投資です。

 

もちろん、良いことをしているから「ご褒美で」投資するわけでなく、こうした分野でリードしていることは企業の「将来的な成長力の現れ」とみるためです。

 

私が昨年7月まで通っていたフランスINSEADMBAプログラムでも、こうしたESG投資に関係する選択授業がありました。

 

ハーバード卒博士で、数々の受賞経歴があるJasjit教授(通称Dr. J)が担当し、教室が学生で一杯になる2部構成の人気授業でした。(当時のコース名は、Social Impact及びImpact Investing)

 

教授自身が、ESG投資が今後どこまで普及するか、その可能性について述べたときの印象的な話があります。

「みんなも、正直なところ、ESG投資ってまだまだどうなるかわからない、一時のブームにすぎないんじゃないの?って思う部分はあるよね」

 

「僕もそうした考えはわかる。ただ、この前、中学生の息子と買い物しにスーパーに行ったとき、すごく怒られたことがあるんだ」

 

「お父さんは、社会的投資を教える教授なのに、なぜ500mlペットボトルを買うのか?って息子がすごい剣幕で怒るんだ。水をちょっと飲むためだけに」

 

「こんなに沢山作られて、飲み終わった瞬間ゴミになって捨てられるもの。中学生の彼は、ペットボトル飲料なんてクレイジーだって言うんだ」

 

「彼の意見は極論かもしれない。けど、僕たちとは全く異なる感覚で、この消費社会をとらえる世代が現れ始めているのかもしれないなぁと僕は思う」

 

「ESG投資も、そうした世代が大人になる頃には当然の要素になるのかもということ。だから社会のリーダーを目指す君たちは、その中身を勉強しておいたほうがよいよ」

というエピソードです。ちなみに、ESG投資にかかる運用額は世界全体で2,500兆円超と言われています(2018年3月GCNJ・IGES資料)。

 

日本における自治体レベルのSDGs

さて、話をSDGsに戻します。先程、SDGsというコトバは日本ではまだ浸透していないと書きました。

 

ただし、コトバはさておき、すでに取り組みを始めている地方自治が存在します。環境面での取り組みを見ていきます。

 

(1)神奈川県・鎌倉市

例えば、亀岡市に先立つ2018年9月4日、神奈川県は、知事名で「かながわプラごみゼロ宣言」を発表しています。

 

かながわプラごみゼロ宣言

海洋汚染が今、世界規模で大きな社会問題となっています。また、プラスチックごみが小さく砕けてできたマイクロプラスチックが、世界中の海で確認されています。こうしたことから、世界中に展開している飲食店でプラスチック製ストローを廃止する動きが広まっています。そんな状況の中、鎌倉市由比ガ浜シロナガスクジラの赤ちゃんが打ち上げられ、胃の中からプラスチックごみが発見されました。

SDGs未来都市である神奈川県は、これを「クジラからのメッセージ」として受け止め、深刻化する海洋汚染、特にマイクロプラスチック問題から、SDGs推進に取り組みます。プラスチック製ストローやレジ袋の利用廃止・回収などの取組を神奈川から広げていくことで、SDGs達成に向け、2030 年までのできるだけ早期に捨てられるプラごみゼロを目指します。

http://www.pref.kanagawa.jp/docs/p3k/sdgs/index.html

 

メディアでも話題になった、鎌倉市由比ガ浜に漂着したクジラの赤ちゃんの胃袋から、大量のプラごみが見つかったという事件。

 

これを「クジラからのメッセージ」と受け止め、SDGsの推進に向けて取り組みを進めています。その中で、ダンスPVまで作成しています。

 

↓踊っているみんなの目がマジです↓

 

クジラからのメッセージ~めざそうプラごみゼロ!~

https://www.youtube.com/watch?v=jFpfP9rmK74&fbclid=IwAR3C59dZyrRXJOivoDZ8Bv3AY4p6GKTeXZ8xA70Yflh92O9qnTDrXemxEBs

 

また、同じ神奈川県で、鎌倉市は2018年10月1日に「かまくらプラごみゼロ宣言」を発表。

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その取り組みの一つとして、市役所の自販機の入札要件にマイカップ式自販機、ペットボトルやプラストローの飲料を排除したもの、の2つを公募するなどしています。

 

(2)大阪府大阪市

2019年6月のG20大阪サミットや2025年大阪・関西万博を控え、活況に沸く大阪。

 

その中で、SDGs先進都市を目指し、大阪府大阪市では「おおさかプラスチックごみゼロ宣言」を、つい先週の1月28日に発表しています。

大阪府大阪市は28日、6月に同市で開かれる主要20カ国・地域(G20)首脳会議や2025年大阪・関西万博が控えていることから、府市庁舎や関連施設での使い捨てプラスチックの使用削減を決めた。「おおさかプラスチックごみゼロ宣言」を掲げ、河川や海洋汚染の防止に率先して取り組む。

 

 大阪湾の海洋生物を傷つける5ミリ以下のプラごみの実態調査や、エコバッグ持参運動などでプラごみゼロを目指す。28日の宣言式で、松井一郎知事は「プラごみを放っておくと生態系に大きな悪影響を及ぼす。万博では持続可能な開発社会を実現する目標があり、府民、市民の理解を得てプラごみの削減につなげたい」と述べた。(2019年1月28日毎日新聞

https://mainichi.jp/articles/20190128/k00/00m/040/271000c

 

(3)徳島県上勝町

ゴミを出さない社会(ゼロ・ウェイスト)を掲げ、都会人の想像を超える細かいゴミの分別を実行している徳島県上勝町

 

ここでは、資源ごみを持ち込み・分別する「ごみステーション」を併設したラーニングセンター、ホテル、ラボ、体験案内所からなる複合施設が2020年にオープンします。http://www.sustainablebrands.jp/sp/community/column/detail/1191346_2562.html

 

上勝町は、世界的に注目されており、海外からの視察が相次いでいる注目の自治体です。「葉っぱビジネス」でも有名です。

 

(4)富山県山梨県

さらに、「レジ袋の無料配布の廃止」を全国に先駆けて、2008年から県下全域で実施している富山県山梨県

 

富山県では、スーパーやクリーニング店のほか、ドラッグストア・ホームセンターも参加し、500店舗を超える取り組みになっています。

 

新聞折り込みによるチラシの全戸配布や説明会の開催などを経て、08年4月にレジ袋無料配布廃止運動がスタート。市町村レベルでの取り組みはあったが、県単位では富山県が全国初だったという。スーパーとクリーニング店28社208店舗で始まった取り組みは18年10月時点で53社524店舗に拡大。ドラッグストアやホームセンターにも広がっている。

 

県は「利用者側の意識を変えることにも取り組んでいきたい」としており、折り畳み式の携帯用マイバッグを配布するなどの「いつでも、どこでもマイバッグ運動」も展開。無料配布廃止の開始前は10~20%程度と見られていたマイバッグの持参率は配布廃止店舗に限ると95%まで上昇した。(2018年12月4日日本経済新聞

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO38481770T01C18A2LB0000/

 

また、山梨県のサッカースタジアムでは、2004年から飲食店の紙コップを廃止し、洗って再利用できるリユースカップを導入(デポジット制)。

 

京都サンガと同じJ2リーグのヴァンフォーレ甲府。そのホームである山梨中銀スタジアムでの「エコスタジアムプロジェクト」という取り組みです。

 

現在では、コップだけでなく、皿やどんぶりなど11種類の食器にまで拡大しており、亀岡市に建設中の京都スタジアムにとって参考になる事例かと思います。

 

他にも、「山梨マイクロプラスチック削減プロジェクト」、通称「Yama・P」も昨年7月からスタート(2018年8月14日朝日新聞)。

https://digital.asahi.com/articles/ASL825JQTL82UZOB018.html

 

ネーミングがイケメンでいいなぁと思うところです。「海のない山梨県から海ごみの削減を目指す」としており、「保津川から海ごみをなくす」取り組みを進める亀岡市と同志と言えます。

 

このように、国に先駆けて取り組みを進めている自治体も数多くあります。広い世界を眺めてみれば、ここまでできるのか、と思うものも沢山あります。

 

「自分たちが何をどこまで実現したいのか」という志は高くもちつつ、関係者と一緒に現実的な手段をさがし、消費者の行動変容を促す。非常にやりがいのある政策分野だと思います。

 

ご紹介した地域と肩を並べられるよう、亀岡市の取り組みを発信していきたいと思います。

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。52歩目!

 


亀岡市役所 地方創生担当部長 

仲山徳音(なかやま なるね)

E-mail: nakayama88@city.kameoka.lg.jp

Phone: (0771) 25-5006