ローカル観光には巨壁が立ちはだかっているらしい
(前回からの回想)全米屈指の名門であるシカゴ大学のジャパントリップ運営者の方に、3月29日(金)に亀岡市を訪問してもらえることとなりました。
採用の連絡をいただいてから、メールでやりとりを続けること2ヶ月。
当然のことながら、旅を最高に楽しいものにするため、先方から色々とリクエストが出てきます。こちらも必死に提案や、地元との調整を行なっていきます。
・費用はいくらいくらまで。あのコンテンツとこのコンテンツとを比較。
・こことここを回りたい。これは他でもできるのでパス。
・周遊ルートに無理がないか。時間がムダに間延びしてないか。
・こういう体験があれば、ぜひプランに入れてほしい。
各コンテンツについてこうしたやりとりを続けると、ローカル観光がどれだけ面白くても、訪日観光客を相手にするには色々な面で制約があることがよくわかります。
①受け入れ人数や都合:「一度にたくさん」や、「ふらっと突然」は難しい。他方、1人や2人だと採算が合わないものも
②英語対応:できていないものが多いので、良さが伝わりきらない。日本人的な面白さは言葉や説明がないと案外分からない
③交通アクセス:それぞれが点在していて、つなぐと時間がかかる・準備が必要
④ネット上での情報量の乏しさ:「タビマエのお客の目」にとまらない、拡散できない
⑤とにかく不安:体験する客も、受け入れ側も、慣れてないので。お試し的な受け入れや事前の打ち合わせを経て、心理的な不安を乗り越えていけるようにする
「日本各地に地域観光の魅力が潜んでいる。外国の人からしても楽しめる」とよく聞きますが、持続可能な形で稼ぐ気なら、お客さん目線になることが重要です。
相手から対価を要求できる内容だろうか?
はるばる観光の目的にたる商品になっているだろうか?
大きなカベを乗り越えていけるよう、商品化とテスト、広報を繰り返していくしかありません。巨額の投資はまず無理なので、小さな一歩を続けていくことになります。
調査兵団・憲兵団・駐屯兵団・観光協会のほか、DMOとか地域商社とかが君の味方だ
・ある程度まとまった人数を、予約で確定させる(多少の増減はなんとかなる)
・英語での情報提供(タビマエ、タビナカ)
・体験内容と交通ルートの最適化(乗用車での送迎、タクシー・バス手配の組合せ)
各コンテンツそれぞれに英語対応や情報発信を求めるのは非効率なので、
体験する客とコンテンツ側との間に立って、
こうしたことをコーディネートできる人間や組織
がいないと観光誘致は進まないと思います。国交省が進めてきた日本版DMOは、こうした観点から設立されており、京都府にはエリアに対応して3つ置かれています。
また、数年前から「地域商社」を立ち上げる動きが日本各地で見られます。
地方経済を活性化しようと、全国各地で「地域商社」が誕生している。特産品はもとより、観光資源なども含めて地域を丸ごと国内外に売り込む企業や団体だ。市場動向を探って「地産外商」で域内に利益をもたらし、新事業を立ち上げる集団ともいえる。地方創生を掲げる政府は全国に100社の地域商社を設立する目標を掲げ、後押ししている。人口減で衰退が続く地方の未来を切り開く司令塔として、注目を集めている。(日本経済新聞2017年7月24日)https://www.nikkei.com/article/DGXMZO19034670Q7A720C1TBU000/
今回は、採算重視ではなく、市役所も含め受け入れコンテンツ側の経験値アップが主目的でした。
そのため、地元の映画製作や商店街振興などに携わり、幅広いネットワークをもつ並河杏奈さんに協力してもらい、提案してもらった注目コンテンツを推していきました。
ストーリー性とテーマ性があると伝えやすいのはマンガと一緒
あれはダメ、これはいい、というやり取りを続けて、全くのゼロから徐々にプランが出来上がっていきます。
(Aコース9千円、Bコース5千円 移動費は除く)
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①米からお酒ができるまで〜酒蔵見学の今昔と利き酒〜@大石酒造さん
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お酒や醤油づくり、エアキッチンなど、日本の「食文化」が柱となる周遊コースになりました。①〜②はマイクロバス移動、②〜④までは自家用車での送迎です。
(エアキッチンについてはこちら)
加えて、旅行業者や個人旅行(FIT)ではなかなか手配できないものをということで、
お寺の住職にお願いし、写経・念仏を体験してもらったり、
地元の伝統工芸士の方にお願いし、友禅体験をしてもらうことになりました。
近年では、モノ消費からコト消費へ、消費の関心が移っていると言われます。
物を売るには、商品の背景にどんなストーリーがあるかが重要とも言われます。
例えば、お米一粒を大事にし、素材の旨味を最大限引き出そうとする日本の食文化。その精神性は、伝統工芸や宗教観と根っこではつながっていると感じます。
そのため、「食文化」を柱としつつ、「地域に根付いたものづくり」や「お寺での体験」を通して、日本の文化の味わってもらうことをテーマとしました。
費用負担や受入れ人数の調整、導線を踏まえた場所の確保など、1月中旬からスタートして多くの調整が必要になり、ここまで来た時点で、時はすでに3月。
逆にエアキッチンの参加ご家庭は、前回10月に経験済みなので、「打合せは1回で!」という頼もしい存在になっていました。
3月29日にプロジェクトをやってしまう部長、オレでなきゃ見逃しちゃうね
ここで商工観光課から、まさかの忠告が。
「3月29日ですが、翌30日のさくらまつりの準備があり、人手不足で、部長のプロジェクトに回せる人がいないと思われます」
「また、市役所の一般慣行として、29日は各部長などの退職挨拶や、異動引き継ぎがあり、職員みんな結構忙しいと思いますよ」
む、なるほど。では、できる限り事前に準備をしつつ、当日はサシで臨めばいいじゃないか。と決戦に向かうことになりました。
その頃の私は春を目前に控え、いけいけドンドンだったのかもしれません。
まさか、当日あんなに忙しくなるなんて・・・(またまた次号に続く58歩目)
亀岡市役所 地方創生担当部長
仲山徳音(なかやま なるね)
E-mail: nakayama88@city.kameoka.lg.jp
Phone: (0771) 25-5006