27歩目:【地域経済編⑩】〇〇部長、小倉山 峰のもみぢ葉 心あらば(〇〇に入るものは?)
いまひとたびの みゆきまたなむ by貞信公 らしい
地方創生担当部長の仲山徳音(なかやま なるね)です。ちはやぶりつつRESASを用いて地域経済を分析するシリーズ、これでラストです。
「RESASを初めて使う者でも地域経済分析を進めていける」ことが、地域経済編シリーズの目標です。
前回は、綾部市・宮津市・京丹後市・南丹市は、昼夜間人口比率は高いものの、その他所得の流入が大きいため、地域経済循環率が低く出る(地域のビジネスが支える所得に対して、外から入るおカネの割合が大きい)
とデータを比べながら、分析しました。以下、再掲。
京都府15市の地域経済循環率、付加価値額と昼夜間人口比率(RESASより作成)
京都府15市の雇用者所得とその他所得の流出入状況(RESASより作成)
入門編のラストとして、その4市は、なぜ「その他所得の流入が大きい」のか、そもそもその他所得ってなに?
”地域経済の健康診断”を行う視点として、解説できればと思います。
てみじかに説明しよう。その他所得とは
RESAS「地域経済循環マップ」→「地域経済循環図」と進み、
3つのグラフのうち、真ん中にある支出の「詳細を見る」をクリックすると、こんな図が出てきます。
下記画面でRESASを辛抱強くじっくり見てみると、「その他所得」の短い説明があります。
”「分配(所得)」は、雇用者に支払われた「雇用者所得」と、財産所得、企業所得、交付税、社会保障給付、補助金等、雇用者所得以外の「その他所得」で構成されます。”
すなわち、その他所得は、「”働き手がはたらいて稼いだお金である雇用者所得”以外の所得」です。主な中身は、財産所得、企業所得、交付税、社会保障給付、補助金です。
・・・これでもまだ分かりにくいかもしれません。もともと「雇用者所得以外の所得」が全てこの中に入ってしまうからです。まさに「その他」所得です。
こうした場合は、ポイントをまず押さえていけばいいです。
実のところ、現時点で大きく押さえておきたい中身は二つだと思います。
それは、国や府から地方自治体に支払われる
②補助金(国庫支出金・府支出金)
学術的には、「政府間財政移転」という呼び方がなされています。
部長の説明がくどすぎぬよう短すぎぬよう
さて。財政移転の観点で考えると、
地域で実現している経済規模(付加価値額)に比して、地方交付税や補助金を国・府から多大な割合で得ている地域ほど、「その他所得」流入の割合が大きくなり、結果として地域経済循環率(=付加価値額/所得)が低くなります。
綾部市・宮津市・京丹後市・南丹市では、この財政移転が大きいのではないか、と予想できます。
果たしてどうでしょうか?
実は、こうした財政移転の数字は、RESAS上に掲載されていないため、自分で調べる必要があります。
自治体財政に関わることなので、決算をみれば一発で分かります。そして、各自治体の決算情報は、皆さんが思っている以上に、統一的にかつカンタンに取れます。
総務省が「決算カード」という形で、各都道府県・各市町村の決算情報が一覧できるよう、整備してくれているからです。
本ブログの読者として「自治体職員の方々」も多いようですので、この機に活用してみてください!!
今回は、RESAS上の数字と揃えるため、
とデータを開き、「①地方交付税・②国庫支出金・③府支出金」の数字を手元で集計しました。
結果は以下の通り。
平成25年度における京都府15市の所得に対する財政移転の割合(決算カード及びRESASより作成)
予想どおり、
綾部市・宮津市・京丹後市・南丹市では、他市に比してこの財政移転の割合が大きい傾向にある、と言えます。
So what? だからどうした?と言う前に自分のアタマで考えよう
国や府から地方自治体に支払われる地方交付税や国庫支出金・府支出金は、「依存財源」とも呼ばれます。地方税などの「自主財源」と対になる呼称です。
実は、これまで見てきた地域経済循環率は、「地域経済の自立度(裏返せば依存度)を図る指標」とも言われます。
京都府15市のデータからは、
依存財源に頼る割合が大きいほど、地域経済循環率(=自立度)は低くなる
ということが示されています。
経済の自立なくして財政の自立なし
と端的に述べた言葉もありますが、こうした根拠に基づいています。
第15歩で見たように、
RESASはいわば”地域の健康診断ツール”とされています。
・人口動態・経済財政状況・観光情勢・医療や交通政策に関する様々な指標を分析
・RESAS以外のデータと合わせて、課題の「客観的につかむ」ことが可能になる
・地域間の比較も容易に行えるため、木を見て森を見ず、にならない
RESASを用いて「地域経済循環率」を見ることで、地域経済がどれほど自立しているか、住民の所得を十分に支えるパワーが地域全体であるか、が判明します。
もちろんこれだけでは、対処方法は生まれません。産業構造や生産力、地域のもつ特色や強みを踏まえた産業政策が求められます。
その前提として「お金がぐるぐる回る地域経済循環の構造」をまずチェックし、
①付加価値額:人口や所得の規模に比して、「生産」が十分に行われているか
②所得:企業や働き手、自治体の「所得」の発生源は地域の中か外か
③支出:「消費や投資」を地域の外から呼び込めているか。地域の外に過大に流出し、地域の生産を支えられていないのではないか
何が問題なのかをRESAS上でチェックできる、ということです。
以上がRESASを用いた地域経済分析の入門編です!
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。秋を待ちながら27歩目。
亀岡市役所 地方創生担当部長
仲山徳音(なかやま なるね)
E-mail: nakayama88@city.kameoka.lg.jp
Phone: (0771) 25-5006