50歩目:【環境政策編①】〇〇部長、2019年は環境問題に取り組む年になる(〇〇に入るものは?)
脱プラスチックがトレンドになりつつあるらしい
2019年もよろしくお願いします。地方創生担当部長の仲山徳音(なかやま なるね)です。
京都府亀岡市役所に着任してまだ半年、「ふるさと納税」をめぐる熱戦が終わらないうちに、新たな課題に挑みはじめています。
(「ふるさと納税」の連載続きは、またの機会に。総務省と各自治体のやりとりがあり、まだまだ動きがありそうです)
年末年始、家でゆっくりテレビや新聞をご覧になった読者の皆さんは、次のような記事を目にされたかもしれません。
世界の大手アパレル企業が脱プラスチックにかじを切る。ファーストリテイリング傘下のユニクロは、日本を含む世界2000店舗で使うレジ袋や商品の包装材を全面刷新する。スペインのZARAも2019年以降、日本で紙製のレジ袋に順次切り替える。環境問題への対応によって企業を選別する動きが投資家や消費者の間で広がっており、環境重視の経営を進めていく。(日本経済新聞2019年1月5日)
こうした動きは、「無印良品」や「H&M」にも見られます。H&Mでは、すでに買い物袋をビニール袋から紙袋に切り替えているそうです。
環境省がレジ袋の有料化を目指す中、衣料品店「H&M」を運営するH&Mジャパン(東京)は昨年12月、レジ袋を紙製に切り替え、1枚20円とした。エコバッグ持参の客も多く、「半数近くが紙袋を求めない」(広報担当)という。(時事ドットコム2019年1月12日)
同記事によると、外食産業も同様の動きを見せています。
すかいらーくホールディングスは昨年12月、ファミリーレストラン「ガスト」の全約1370店舗で、プラ製ストローを廃止した。必要な場合にはトウモロコシが原料のストローを個別に提供する。「環境への配慮を説明すると、(ストロー自体を)受け取らない顧客が多い」(広報)とおおむね理解を得ている。
また、別の店でも、
外食チェーン大手のリンガーハットは10日、14日までに長崎ちゃんぽん店「リンガーハット」などグループの国内の全店舗約780店で、プラスチック製の使い捨てストローを廃止すると発表した。環境保護への取り組みを強化する。(毎日新聞2019年1月10日)
亀岡市のターコイズブルーオーバードライブ
アパレル業界や外食産業でこうした動きが広がる中、私の勤める京都府亀岡市が、全国初の「レジ袋を禁止する条例」制定を目指したことで、波紋を呼んでいます。
その姿勢は、昨年12月に、市民を代表する市議会と市役所とが連名で出した宣言で明らかにされました。
宣言と合わせて、5つの目標を掲げています。ポイントとして、
1.エコバック持参率を100%とする。ゆえに、2019年度におけるレジ袋「有料化」を経て、2020年度はその「禁止」まで踏み切る。
2.保津川から海へプラスチックごみを流さない「環境意識」の醸成。
3.プラスチックごみの100%回収。
4.2030年までにプラスチックの使い捨てゼロを目指し、リユース食器や再生可能な素材を使用。
5.市民や事業者の環境に配慮した取り組みをサポートする。
こうした取り組みを進めるなかで、行政・市民・事業者協働で「環境先進都市・亀岡」のブランド力を向上したいということです。
桂川市長は記者会見で「一石を投じたい」としていましたが、その思惑通り、この1か月、大きな波紋を生みつつあります。
担当課に対して、大阪など他自治体からの問い合わせも相次ぎ、全国紙をはじめ10数社以上のメディアから取材があり、政治的な賛同もありました。
桂川孝裕市長は「流域全体の取り組みが必要だ」として近隣の京都市、南丹市、京丹波町も規制するよう、呼び掛けた。南丹市の西村良平市長は「好意的に受け止める。市民の声を聞いて議論したい」と言い、由良川水系の京丹波町の太田昇町長も「歩調を合わせたい」と協力する考えを示した。(京都新聞2019年1月10日)
一方、意義を伝える報道と同時に、自治体間の温度差も伝えられています。
京都市の門川大作市長は「条例による上から目線の禁止はしない」と断言。同市には、事業者に粘り強く働きかけて大型スーパー全店で有料化を実現させたという自負があり、市環境政策局は「時間をかけて市民や店舗の理解を得ないと、大混乱に陥る」。京都府の西脇隆俊知事も「意欲は評価するが、市町村ごとに事情は違う」と府内市町村で一律禁止する条例には否定的だ。
また、ネットの世界でも賛否両論。応援も多々ありますが、批判として主にみられる論調は、
〇石油精製過程や、焼却・リサイクル過程を踏まえると、ビニール袋は大きな環境悪ではない。環境負荷が大きい製品や行為は、他にいくらでもある。
〇ビニール袋は家庭ゴミ袋にもなるなど利便性が高く、かつ低コスト。禁止条例は、消費者の生活・企業経営に無理を強いていないか。
〇プラスチックの使い捨てゼロや保津川の保全、海洋汚染の防止という目的に対して、一地域だけでのレジ袋禁止は、手段として効果が乏しい。
といったものです。
果たしてそうなのでしょうか?
坂道をのぼるか・眺めているだけにしておくかの選択
まずは現場を見てみるべし。休日の1月13日に開かれた保津川クリーン作戦に、はじめて参加しました。
流域の住民・企業・NPOなどで構成される「プロジェクト保津川」が主催する保津川の清掃活動。
保津川の船頭さんが始め、10年以上も前から続き、今回で118回目を迎えます。第118回目に集まったのは20名を超える有志の方々。
(手にもつのは、亀岡の約130店舗の商店で利用できる「ありがとう券」。こうした活動と組み合わせ、地元経済との連携を目指す試み)
8時45分から開始して、丈夫なゴミ袋とトングを手に、川辺に沿って、ゴミ拾いをしていきます。
413年の歴史をもつ保津川下りのための「水寄せ」の上を進みます。
木のトゲに引っかかったり、背の高い草むらにあるため、近づくと見えなくなる腹立たしいビニール袋など。
苦戦しながら、たった1時間で集まったゴミの量です。意味不明なものも多く、過去には「便座」なども拾ったそうです。
このように集めてきたゴミは、ビニール袋やペットボトルなど圧倒的にプラスチック製品が多く、全体総量の6割を占めます。
プラスチックであれ、何であれ、そもそもは「自然を汚すゴミのポイ捨て」をなくしていくべきです。ただ、それが実際に難しいために、今日の環境問題が発生していると言えます。
単なる「あるべき論」を唱えても、誰も何も変えてくれません。
亀岡市の宣言は、こうした現状にまさに一石を投じるもの。反響として起きてくる消費者の声を聞き、当事者となる事業者との議論を重ねて、取り組みを進めます。
規制だけでなく、ゴミの回収を進めて資源化率を高めること・環境保全の観点から他自治体との連携も不可欠です。
また、できる限り注目を集めることで、消費者・事業者の行動変容を促すことが重要だと思っています。そのため、批判も大いに歓迎します。
今回の連載では、国内外の動向や事例も踏まえながら、「一石を投じる」議論の素材を提供していきたいと思います。
読者の皆様が知っている面白い取り組みや参考事例があれば、ぜひご連絡を!
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。2019年の歩き初め、50歩目。
亀岡市役所 地方創生担当部長
仲山徳音(なかやま なるね)
E-mail: nakayama88@city.kameoka.lg.jp
Phone: (0771) 25-5006